夏の足音が聞こえてくると、愛犬チワワのために「サマーカット」を考える飼い主さんは少なくありません。特に、見た目にも涼しげな「3mm」という短いスタイルは、「暑さ対策になるのでは?」「お手入れが楽になりそう」といった理由から、選択肢の一つとして挙がりやすいようです。
しかし、チワワのサマーカット、とりわけバリカンで全身を短く刈り込む「3mm」スタイルには、本当にメリットしかないのでしょうか?
「そもそもチワワにサマーカットって必要?」
「3mmって短すぎない?何かリスクはない?」
「カットするなら、いつが良いの?料金は?」
実は、チワワのサマーカット、特に3mmのような極端な短さには、多くの注意点と潜在的なリスクが潜んでいます。見た目の涼しさとは裏腹に、愛犬の健康を損ねてしまう可能性もゼロではないのです。
この記事では、そんなチワワの「3mm」サマーカットについて、飼い主さんが抱える疑問や不安を解消するために、どこよりも詳しく徹底解説していきます。
- チワワにサマーカットはそもそも必要なのか?
- もし行うなら、適切な時期はいつ?
- 「3mm」のサマーカットの長さはどうか?
- サマーカットのメリット・デメリット
- サマーカットにかかる料金の目安
この記事を読むと、チワワに特に人気な「3mm」サマーカットが愛犬にとって本当に良い選択なのか、正しい知識に基づいて自信を持って判断できるようになるはずです。「知らなかった」と後悔しないためにも、ぜひ参考にしてみて下さい。
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執筆者プロフィール

なお
- 薬剤師兼ブロガー
- 資格:
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定薬剤師
日本病院薬剤師会 病院薬学認定薬剤師
一般社団法人薬学教育協議会 認定実務実習指導薬剤師 - 愛犬チワワ:アル(♂)
- プロフィールの詳細はこちらから
そもそもチワワにサマーカットは必要?

まず最初に、最も基本的でありながら、最も重要な疑問「チワワにサマーカットは本当に必要なのか?」について、深く掘り下げて考えてみましょう。
健康なチワワにとって、単なる暑さ対策を目的としたサマーカットは、基本的に必要ない。
それどころか、何もしない方が愛犬の健康維持にとっては良い場合が多いのです。その根拠は、チワワが持つ被毛の素晴らしい機能にあります。
◼︎チワワの被毛タイプを理解する
ご存知の通り、チワワには毛の長さによって2つの主要なタイプが存在します。
- ロングコートチワワ
優雅で長い上毛(オーバーコート)と、その下に隠れた短く綿毛のような下毛(アンダーコート)を持つ、典型的なダブルコート(二重毛)です。この二層構造が重要な役割を果たします。 - スムースコートチワワ
短く、体にぴったりとフィットした光沢のある毛が特徴です。スムースコートの中にも、アンダーコートを持つダブルコートタイプと、アンダーコートが非常に少ないか、ほとんどないシングルコートに近いタイプが存在すると言われています。ダブルコートのスムースの場合、ロングコートほどではありませんが、同様の被毛機能を持っています。
◼︎犬の被毛が持つ、驚くべき天然の高機能
犬の被毛は、単なる飾りではありません。特にダブルコートの被毛は、厳しい自然環境を生き抜くために進化した、驚くほど高機能なシステムなのです。
- 驚異の断熱効果
これがサマーカット不要論の最大の根拠です。ダブルコートの毛は、夏は空気層を作って、外からの暑い熱気を遮断し、逆に体内の熱がこもりすぎるのを防ぐ働きをするのです。つまり、被毛は夏は涼しく過ごすための、天然の高性能エアコンのような役割を果たしているのです。 - 紫外線からの保護: 皮膚を紫外線から守り、日焼けや皮膚がんのリスクを軽減します。
- 物理的な保護: 外部の刺激(擦り傷、虫刺されなど)から皮膚を守ります。
◼︎サマーカットの必要性を再考する
これらの被毛の重要な役割を理解すると、「暑そうだから短くカットしてあげよう」という考えが、必ずしも犬のためになるとは限らないことが見えてきます。むしろ、良かれと思って行ったサマーカットが、天然の防御機能や体温調節機能を奪い、かえって愛犬を危険に晒してしまう可能性があるのです。
もちろん、サマーカットが選択肢となる例外的な状況も存在します。
〈サマーカットが選択肢となる例外的な状況〉
- 皮膚疾患の治療上必要な場合
獣医師が治療のために、患部の毛を刈る必要があると判断した場合。これは美容目的ではなく、医療行為の一環です。 - 重度の毛玉
日常のブラッシングを怠った結果、毛玉がフェルト状になり、皮膚を引っ張って痛みを与えている場合。これも、本来は毛玉ができる前のケアが重要です。毛玉除去のためにやむを得ず刈る場合でも、根本的な解決にはなりません。 - 高齢や病気によるケアの負担軽減
体力が低下し、長時間のブラッシングやシャンプーが犬自身や飼い主にとって大きな負担となる場合に、お手入れを簡略化する目的で行うことがあります。
これらの特別な理由がない限り、健康なチワワへの短すぎるサマーカットは推奨されません。暑さ対策は、エアコンでの室温管理、クールグッズの活用、散歩時間の調整、ブラッシングによる通気性確保などで行うのがより安全で効果的です。
チワワにサマーカットをするのに適切な時期は?

様々な事情を考慮し、「それでもやはりサマーカットをしたい」と決断した場合、次に重要になるのが「いつ行うか」というタイミングです。適切な時期を選ぶことは、愛犬への負担(被毛、皮膚、体温調節、ストレス)を最小限に抑え、サマーカットによるデメリットを少しでも軽減するために不可欠です。
推奨される時期:5月〜6月頃
サマーカットの推奨時期:晩春~初夏(具体的には5月~6月頃)
一般的に、サマーカットを行うのに最も適しているとされるのは、本格的な夏の暑さが到来する少し手前の、晩春から初夏にかけて(5月~6月頃)です。
〈晩春~初夏(5月~6月頃)のサマーカットが推奨される理由〉
- 紫外線対策の猶予期間
真夏の最も紫外線が強い時期(7月~8月)に丸刈りに近い状態にするのは、皮膚へのダメージリスクが非常に高くなります。5月~6月頃にカットすれば、夏本番までに多少なりとも毛が伸び、紫外線からの保護効果が少しは回復する期間を確保できます(ただし、3mmのような短いカットでは、十分な保護効果は期待できません)。 - 冬毛再生への配慮
秋にカットすると、冬の寒さが本格化するまでに十分な防寒機能を持つ被毛が生え揃わず、寒さで体調を崩してしまうリスクが高まります。5月~6月頃であれば、秋までにある程度毛が伸びる時間的余裕があります。
絶対に避けるべき時期:7月以降、換毛期
サマーカットを避けるべき時期:真夏(7月~8月)、秋以降(9月~)、換毛期(春・秋)
〈真夏、秋以降、換毛期のサマーカットを避けるべき理由〉
- 真夏(7月~8月):紫外線が最も強く、皮膚ダメージや熱中症のリスクが高い。
- 秋以降(9月~):冬に向けて被毛が必要になるため、寒さで体調を崩す原因となる。
- 換毛期(春・秋):皮膚がデリケートな時期。ブラッシングによる死毛除去を優先。
チワワのサマーカットは何ミリが一般的?「3mm」は短すぎる?

サマーカットの時期が決まったら、次に直面するのが「どのくらいの長さでカットするか?」という、具体的なスタイルの問題です。様々なミリ数が選択可能ですが、「3mm」は、チワワにとって本当に適切な長さなのでしょうか?
カットのミリ数と仕上がりのイメージ
トリミングサロンで使われるバリカンには、様々な長さのアタッチメント(替刃)があり、ミリ数によって仕上がりの長さが変わります。
- 比較的長め(皮膚への負担が少ない推奨ライン)
- 13mm、16mm: かなり長さを残すスタイル。毛の流れや柔らかさを保ちつつ、全体的にボリュームダウンできます。自然な仕上がりに近く、皮膚へのダメージも最小限に抑えられます。
- 8mm、10mm: 見た目にも「カットした」と分かる程度にスッキリします。毛の保護機能もある程度維持され、チワワのサマーカットとしては、このあたりが比較的安全で一般的な選択肢と言えるかもしれません。
- 短め(注意が必要なライン)
- 5mm、6mm: かなり短くなり、地肌の色がうっすら見えることもあります。お手入れは楽になりますが、紫外線や外部刺激への防御力はかなり低下します。このあたりから、毛質変化のリスクも意識し始める必要があります。
- 極短(リスクが高いライン)
- 3mm: 今回のキーワード。地肌がかなり透けて見え、皮膚の色や血管が分かることもあります。触ると硬い毛がチクチクする感触になります。
- 2mm、1mm: いわゆる「丸刈り」「スキンヘッド」に非常に近い状態。皮膚がほぼむき出しになります。
「3mm」カットのメリット
ここで、「3mm」カットのメリットを、より具体的に見てみましょう。
〈「3mm」カットのメリット〉
- 圧倒的なスッキリ感
見た目が非常に短く、いかにも涼しそうな印象を与えます。 - お手入れの劇的な簡略化
シャンプー後のドライヤー時間はほぼ不要なくらい短縮されます。ブラッシングもほとんど必要なくなります。 - 抜け毛の激減
短い毛しかないので、抜け毛が目立たなくなり、掃除が楽になります。 - 皮膚トラブルの発見容易性
皮膚の状態が一目瞭然なので、異常があればすぐに気付くことができます。
チワワの被毛や抜け毛対策に関しては以下の記事で詳しく解説しています。私も実践している方法を掲載しているので、抜け毛にお悩みの方はサマーカットの前にぜひ試してみて下さい。
チワワの毛が抜ける原因は換毛期?病気?抜け毛がひどい時の対策を解説!
「3mm」カットのデメリット・リスク
次に、「3mm」カットのデメリットを、より具体的に見てみましょう。
〈「3mm」カットのデメリット・リスク〉
- 深刻な紫外線ダメージ
皮膚を守るものがなくなり、紫外線が直接皮膚に到達します。これにより、赤み、痛み、水ぶくれ、シミ、シワを引き起こし、最悪の場合、皮膚がんのリスクを大幅に高めます。 - 極端な体温調節機能の喪失
天然の断熱材である被毛がなくなるため、外気温の影響をもろに受けます。炎天下では急速に体温が上昇し熱中症に、冷房の効いた室内や日陰、水遊び後などでは急速に体温が奪われ低体温症になりやすくなります。体温維持のために余計なエネルギーを使うことにもなります。 - 物理的ダメージへの脆弱性
皮膚を守るクッションがないため、ちょっとしたことで怪我をしやすくなります。家具にぶつかる、爪で引っ掻く、他の犬とじゃれ合う、草むらで擦れる、虫に刺される…これら全てが皮膚への直接的なダメージに繋がります。 - 高確率でのバリカン負け・皮膚炎
3mmという短さでバリカンをかけることは、皮膚への物理的な刺激が非常に強くなります。特に皮膚が薄くデリケートなチワワの場合、バリカン負けによる赤み、かゆみ、湿疹、ひどい場合は細菌感染による皮膚炎を引き起こす可能性が高まります。 - 毛質変化・脱毛のハイリスク
特にダブルコートのロングコートチワワの場合、3mmまで短く刈り込むと、毛周期が狂ったり、毛根にダメージが及んだりする可能性が高まります。その結果、以下のような症状が現れる可能性があります。- 次に生えてくる毛が、以前と全く違う硬い毛質になる。
- 部分的に毛が生えず、まだら模様になる。
- 最悪の場合、広範囲にわたって毛がほとんど生えてこなくなる。一度発症すると、回復は非常に困難で、数年単位の時間がかかるか、生涯元に戻らないケースも珍しくありません。
結論:「3mm」はチワワには短く、健康面へのリスクが高い
「3mm」のサマーカットはチワワには短く、最低でも「5mm」以上の長さがオススメ
これらの点を総合的に考えると、チワワのサマーカットにおいて「3mm」という長さは、メリットよりもデメリット、特に深刻な健康リスクの方がはるかに上回る可能性が高いと言わざるを得ません。
もし、何らかの理由でサマーカットを選択する場合でも、愛犬の健康と安全を第一に考えるならば、最低でも5mm、できれば8mm以上の長さを残すことを推奨します。トリミングサロンでオーダーする際は、トリマーさんと十分に相談し、ミリ数を決定することが極めて重要です。信頼できるトリマーさんであれば、3mmのリスクを説明し、より安全な長さを提案してくれるはずです。
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チワワの「3mm」のサマーカットにかかる料金は?

もし、様々なリスクを理解した上で、それでもサマーカットをプロにお願いすると決めた場合、費用はどのくらいかかるのでしょうか?
料金体系の基本
トリミングサロンの料金は、通常「シャンプーコース」と「シャンプー&カットコース」の2つが基本となります。サマーカットは、全身の毛をカットするため、「シャンプー&カットコース」の料金が適用されるのが一般的です。
◼︎シャンプーコース
シャワー、シャンプー、爪切り、耳掃除、肛門腺絞り、ヒゲカット、足裏・肛門周りのカット、デンタルケア、肉球ケア
◼︎シャンプー&カットコース
シャンプーコース+全身カット
チワワのサマーカットの料金相場
地域やサロンのグレードによって料金には幅がありますが、一般的な目安としては以下の通りです。
◼︎シャンプーコース:3,000円 ~ 6,000円程度
◼︎シャンプー&カットコース
:5,000円 ~ 10,000円程度
サマーカットの場合でも、基本的には上記の「シャンプー&カットコース」の料金になることが多いでしょう。ただし、サロンによっては以下のような料金設定の場合もあります。
〈その他の料金設定〉
- ミリ数による料金差はあまりない
通常、3mmでも5mmでも8mmでも、ミリ数によって料金が変わることは少ないです。 - サイズ・体重による変動
同じチワワでも、標準的な体重(例: 3kg未満)と、やや大きめの体重(例: 5kg以上)で料金区分を設けているサロンもあります。 - ロングコートとスムースコート
ロングコートの方が毛量が多く、作業時間もかかるため、スムースコートよりも若干高く料金設定されている場合があります。
料金の安さだけでサロンを選ぶのではなく、トリマーさんの経験、犬への接し方、衛生管理、カウンセリングの丁寧さなどを総合的に判断し、大切な愛犬を安心して任せられる信頼できるサロンを選ぶことが重要です。
実際にサマーカットにかかった料金
私がアルのサマーカットをして実際にかかった金額は以下の通りでした。
チワワ(L) シャンプー&カットコース:7,700円
コース内容
全身カット(サマーカット)、オゾンシャワー、シャンプー、爪切り、耳掃除、肛門腺絞り、ヒゲカット、足裏・肛門周りのカット、デンタルオゾンケア、肉球ケア
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まとめ:チワワの「3mm」のサマーカット、本当に必要かもう一度考えてみよう

今回は、チワワのサマーカット、特にリスクが指摘される「3mm」という短さに焦点を当てて、その必要性から適切な時期、メリット・デメリット、そして料金に至るまで、詳しく、そして深く掘り下げて解説してきました。
- サマーカットの必要性
健康なチワワにとって、暑さ対策を主目的としたサマーカットは基本的に不要です。被毛は天然の断熱材であり、紫外線や外部刺激から皮膚を守る重要な役割を担っています。 - 適切な時期
カットを行う場合は、晩春~初夏(5月~6月頃)が推奨されます。真夏や秋以降のカットはリスクを高めます。 - 長さ(ミリ数)の危険性
「3mm」は極端に短く、非常にリスクが高いです。紫外線ダメージ、体温調節機能の喪失、皮膚トラブル、回復困難な毛質変化や脱毛のリスクが問題視されており、安全性を考えるなら、最低でも5mm以上、できれば8mm以上の長さを残すようにしましょう。 - メリット
お手入れの簡略化、一時的な抜け毛の軽減感、皮膚トラブルの発見しやすさなどが挙げられますが、犬自身の健康メリットは限定的か、むしろマイナスになる可能性があります。 - デメリット
体温調節困難、紫外線ダメージ、外部刺激への脆弱化、バリカン負け、深刻な毛質変化・脱毛、精神的ストレスなど、多くの深刻なリスクが存在します。 - 料金
シャンプー&カットコースで5,000円~10,000円程度が相場ですが、サロンにより変動します。
結論として、チワワのサマーカット、特に「3mm」のような短いスタイルは、メリットよりもはるかに大きなデメリットとリスクを伴う可能性が高いと言えます。安易に行うべきではありません。
愛犬の暑さ対策を考えるのであれば、サマーカットという手段に頼る前に、まずは以下のような、より安全で効果的な方法を実践しましょう。
- エアコン等を活用した室内環境の整備
- クールマット、クールネック、冷却ベストなどの冷却グッズの利用
- 散歩時間の調整と、アスファルトの温度確認
- いつでも新鮮な水が飲める環境の提供
- こまめなブラッシングによる死毛の除去と通気性の確保
これらの対策を講じてもなお、暑さが心配な場合や、特別な理由がある場合にのみ、サマーカットを検討しましょう。その際も必ず獣医師や信頼できるトリマーさんと十分に相談し、3mmといった極端な短さは避け、できるだけ長さを残すようにしてください。
最終的な判断は飼い主さん自身に委ねられますが、目先の利便性や見た目の印象だけでなく、愛犬の長期的な健康、安全を最優先に考え、後悔のない、愛情のこもった選択をしてあげてください。
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