チワワは、全犬種の中でも特に吠えているイメージのある犬種ではないでしょうか。無駄吠えの原因として、飼い主の性格や行動が大きく関わっていることが、論文でも証明されています。
- 愛犬の無駄吠えの原因が知りたい。
- 愛犬が無駄吠えをするんだけど、どのようにしつけたらいいのか知りたい。
このような皆さんのお悩みを『論文のデータ』や『私とアルの生活の中での実例』を基に解説していきます。他では中々紹介されていない根拠のある内容を基に解説するので、ぜひ今後の生活にお役立てください。
この記事では、
- 無駄吠えが多い犬種と少ない犬種
- チワワが無駄吠えをする理由
- チワワの無駄吠えに影響を与える個体関連因子
- チワワの無駄吠えに影響を与える飼育環境
- 飼い主の性格とチワワの無駄吠えとの関連性
- チワワの無駄吠えに対するしつけ法(実例あり)
について解説しています。
執筆者プロフィール

なお
- 病院薬剤師(8年)→薬局薬剤師(1年)→フリーランスとして活動開始
〈資格〉
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定薬剤師
日本病院薬剤師会 病院薬学認定薬剤師
一般社団法人薬学教育協議会 認定実務実習指導薬剤師 - ペット飼育初心者だったが、2018年にチワワのアルに一目惚れし、お迎え
- プロフィールの詳細はこちらから
無駄吠えが多い犬種と少ない犬種

30歳以上の女性が飼育している602頭を対象にアンケートを実施し、犬の吠えの各項目について0〜4の5段階で評価した研究では以下の結果となっています。注1
〈無駄吠えが多い犬種〉
- トイ・プードル
- チワワ
- ミニチュア・ダックスフンド
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- ポメラニアン
- ミニチュア・ピンシャー
〈無駄吠えが少ない犬種〉
- フレンチ・ブルドッグ
- ゴールデン・レトリバー
- ラブラドール・レトリバー
- フラットコーテッド・レトリバー
トイ・プードル、チワワ、ミニチュア・ダックスフンドの無駄吠えが多い上位3犬種に次いでポメラニアン、ミニチュア・ピンシャーの2犬種が他犬種と比較して無駄吠えが多いことが分かりました。
チワワの性格
チワワが無駄吠えをする理由を考える上で、チワワの性格を知っておくことは重要です。
〈チワワの性格〉
- 警戒心が強く、怖がり
- 活発で勇敢
- 飼い主には忠実で寛容
- 甘えん坊で自己主張が強い
- 学習能力が高い
チワワは賢いが、自己主張が強いため、甘やかして育つとわがままになりやすい特徴があります。
チワワが無駄吠えをする理由
チワワが無駄吠えする理由は、前述した性格によるところが大きいと考えられます。

いつも吠えているけど、どうしてそんなに吠えるんだい?



自分や飼い主を守るのと、飼い主に色々してもらいたいからかな
チワワは警戒心が強く臆病なので、「近付くな」という意味で吠えている場合、飼い主には忠実なので飼い主を守ろうとする場合、自己主張が強いので、飼い主へ様々な要求をするために吠えている場合、興奮して吠えている場合などがあります。
チワワの無駄吠えに影響する個体関連因子


前述の研究では、吠え頻度に影響する個体関連因子として犬種、入手時の週齢、入手先が挙げられています。注1
個体関連因子 | 吠え頻度が高い | 吠え頻度が低い |
犬種 | トイ・プードル チワワ ミニチュア・ダックスフンド ポメラニアン ミニチュア・ピンシャー | フレンチ・ブルドッグ ゴールデン・レトリバー ラブラドール・レトリバー フラットコーテッド・レトリバー |
入手時の週齢 | 7週齢以下 8週齢以上4ヶ月齢未満 | 4ヶ月齢以上6ヶ月齢未満 |
入手先 | 自家繁殖 拾得 ペットショップ | ブリーダー |
4ヶ月齢以上6ヶ月齢未満の時に、ブリーダーから購入すると無駄吠えが少ない傾向にあることが分かります。
チワワの無駄吠えに影響を与える飼育環境
前述した研究では、吠え頻度に影響する飼育環境因子として、飼育場所、寝床の有無、在宅時の状況、留守番時の状況、夜間睡眠場所、留守番時間、普段の排泄場所、散歩中の排泄、散歩頻度、散歩時間、おもちゃ管理、飼育経験、家族構成、飼育頭数が挙げられています。注1
飼育環境因子 | 吠え頻度が高い | 吠え頻度が低い |
飼育場所 | 室内 屋外 | 室内と屋外の両方 |
寝床の有無 | サークル内にベッド | ない サークル クレート その他 |
在宅時の状況 | その他 | クレート内 |
留守番時の状況 | − | − |
夜間睡眠場所 | 飼い主と別室自由 飼い主と同じ布団 | 飼い主と同室自由 クレート |
留守番時間 | 3時間以上6時間未満 | 3時間未満 |
普段の排泄場所 | 室内 | 屋外 その他 |
散歩中の排泄 | − | − |
散歩頻度 | 1日1〜2回 | 1日3回以上 全く行かない |
散歩時間 | 15分以上30分未満 30分以上1時間未満 | 15分未満 1時間以上 |
おもちゃ管理 | 犬がとれないようにしまってある | 基本的にはしまうがいくつか出してある 犬が好きな時に遊べる所に置いてある その他 |
飼育経験 | なし | あり |
家族構成 | 1人暮らし | 3人暮らし |
飼育頭数 | 多頭飼育 | 1頭飼育 |
おやつを与える機会 | 飼い主の気分 留守番時 散歩中 | 犬の食後 身体のケア後 |
留守番前実施事項 | おやつやガムを与える 何もしない | 撫でる |
帰宅後実施事項 | すぐに名前を呼ぶ 落ち着いた後声をかける(名前以外) | すぐ撫でる 何もしない |
※「−」は有意差なかったため記載なし



つまり、この結果からはどういうことが分かるの?



この結果から、愛犬の吠えの理由がみえてくるよ
〈上記研究結果から分かる吠えの理由〉
- おもちゃ管理、犬におやつを与える機会、留守番前・帰宅後実施事項から
→飼い主の行動が、要求吠えを増長させている可能性がある
- 留守番時間、家族構成から
→留守番時間が長いほど、犬の興奮度が上がり無駄吠えを増長させている可能性がある
- 飼育頭数から
→1頭が吠えることでその他の犬の吠えも増長させてしまう可能性がある
- 飼育経験から
→犬へのしつけ経験の差が無駄吠えに関与している可能性がある
吠え頻度の高い行動・低い行動は上記の通りですが、愛犬のチワワで吠え頻度が低い行動を全て実践することは現実的に難しいでしょう。散歩頻度を全く行かないまたは1日3回にするなど、チワワの健康に悪影響を及ぼす恐れがあるものもあるため注意しましょう。
次項の「チワワの無駄吠えに対するしつけ方・対策」で、今日から実践できる対策をまとめています。
飼い主の性格とチワワの無駄吠えの関連性
前述の研究では、吠え頻度に影響する飼い主関連因子として、性格特性5因子(神経症傾向、外向性、開放性、調和性、誠実性)、LAPSスコアが挙げられています。注1
〈各項目の説明〉
- 神経症傾向:ネガティブ刺激への反応の強さ
- 外向性:社交性や積極性、活発さ
- 開放性:知的好奇心の強さや想像力の豊かさ、芸術的な関心の高さ
- 調和性:他者への共感力や配慮、思いやり
- 誠実性:感情や行動をコントロールする力、良心性、責任感の強さ
- LAPSスコア:犬に対する愛着の評価
飼い主関連因子 | 吠え頻度が高い | 吠え頻度が低い |
神経症傾向 | 高い | 低い |
外向性 | 高い | 低い |
開放性 | 低い | 高い |
調和性 | 低い | 高い |
誠実性 | 低い | 高い |
LAPS | 低い | 高い |
神経症傾向スコアが高い人は、情緒不安定で、不安・恐怖・怒り・困惑・悲しみなどの感情を経験しやすいのに対して、神経症スコアが低い人は、精神的にも安定しており、ストレスを感じにくい傾向があります。
上記の研究結果より、飼い主が情緒不安定でストレスを感じやすい人ほど、犬の吠え頻度が多くなることが分かりました。ただ、わずか10分の撫でる、触るといった犬との交流が飼い主のストレスを減少させることに繋がることが示唆されています。
チワワの無駄吠えに対するしつけ方・対策


飼育環境を整える
前述の研究結果より、飼育環境を整えることで無駄吠えを減らすことができると考えられています。飼育環境と飼い主の行動で本日からすぐに実践可能な対策をまとめておきますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
〈チワワの無駄吠えを減らす環境作り〉
- おやつを与えるタイミングを愛犬の食後、身体のケア後にする
- 留守番をさせる前はおやつやガムを与えず、撫でてから外出する
- 帰宅後は名前を呼ばずに、すぐに撫でるもしくは何もしない
- おもちゃは、愛犬が好きな時に遊べる所に置く
- 散歩は、1回30分1日2回する(それ以上の散歩は関節を痛める可能性あり)
- 普段の排泄は、なるべく屋外でさせる
- 3時間以上の留守番は避ける
〈チワワの無駄吠えを減らす飼い主の行動〉
- 日頃の暮らしの中で撫でる、触るといった愛犬との交流を10分以上行う
小さい頃から社会性を身につけさせる
生後3〜12週間は「社会化期」と呼ばれ、この時期に他の人や犬との触れ合いを持たない環境で育つと、成長後に他の人や犬に恐怖行動を示すことが分かっています。
そのため、生後3〜12週間の社会的な交流が、成長後の無駄吠えの対策に繋がると考えられます。
要求吠えに応じない
前述した研究結果からも、飼い主の行動が要求吠えを増長させる可能性があることが分かりました。
「おやつやガムが欲しい」「散歩に連れて行って欲しい」などの要求があって吠えていてもそれに応じないことが大切です。そこで要求に応じてしまうと、「吠えれば要求が通る」と理解してしまい、吠え癖が付く原因となります。「近所に迷惑がかかる」「可哀想」といった気持ちが出てくるとは思いますが、要求には応じず、吠え続けるようであれば別室に移動するなど対応するようにしましょう。
興奮させない
長時間留守番させていた場合など、飼い主が帰ってきた時の喜びで興奮し、吠えることが考えられています。



留守番の時間が長い程、帰ってきた時は嬉しい!
留守番させる時間を短くして興奮させないことやその他興奮する原因がある場合には、その原因を取り除くことが重要です。愛犬が興奮している場合は、まずは飼い主が落ち着いて撫でるなどの対応で落ち着かせるようにしましょう。愛犬と一緒に喜ぶとさらに無駄吠えを増長させてしまう可能性があるので注意しましょう。
筆者とアルによる無駄吠えのしつけ体験談
実際にロングコートチワワのアルを飼っている私の体験談をお話しします。
〈アルの性格〉
甘えん坊、怖がり、勇敢
〈行った無駄吠えしつけ法〉
- おやつを与えるタイミングを愛犬の食後、身体のケア後にする
- 留守番をさせる前はおやつやガムを与えず、撫でてから外出する
- おもちゃは、愛犬が好きな時に遊べる所に置く
- 普段の排泄は、なるべく屋外でさせる
- 日頃の暮らしの中で撫でる、触るといった愛犬との交流を10分以上行う
- 要求吠えは無視し、別室に指導する
〈アルの吠え状況〉
▪️しつけ前
- 別室に移動したら吠える
- 玄関チャイムが鳴ったら吠える
- 来訪者にずっと吠え続ける
- 飼い主帰宅後に吠える
- 子どもを見かけたら吠える
↓
▪️2025年1月現在(アル6才)
- 飼い主帰宅後に吠える
- 子どもを見かけたら吠える
- (玄関チャイムが鳴ったら吠える)
- (来訪者に吠える)
※( )は改善見られるが、時々吠えあり
〈しつけを行って良かった点・反省点〉
▪️しつけを行って良かった点
- 無駄吠え・要求吠えが圧倒的に減った
- 吠えても、吠えている時間が短くなった
▪️しつけを行っての反省点
- 社会化期前から他の人や犬に慣れさせておくべきだった
- しつけについて飼う前に学んでおくべきだった
アルの吠えに関しては、しつけで大方改善が見られました。しかし、社会化期前から他の犬や人と慣れさせることをあまりしなかったため、他犬に比べて社交性が低く怖がりな性格になっており、それが原因と考えられる無駄吠えの改善は見られていません。
まとめ
今回の記事のまとめです。
- チワワは警戒心が強く怖がりな一方で、飼い主には甘えん坊で自己主張が強い
- チワワが吠えるのは、恐怖、防衛、要求、興奮などの理由がある
- 犬が4ヶ月齢以上6ヶ月齢未満の時に、ブリーダーから購入すると無駄吠えが少ない
- 愛犬の飼育環境を整えることで、無駄吠えを減らすことができる
- 飼い主の性格が、犬の無駄吠えに関連する
- しつけをする際は無駄吠えの理由を考え、それにあった対策をすることが重要
本記事では、チワワの無駄吠えの原因としつけ方・対策について論文や実体験を基に解説してきました。チワワの無駄吠えにお悩みの方に対して、この記事が一つでもお悩みを解決できる手助けになれば幸いです。